「面をあげよ。伯爵、その者がそうか?」
「はい、フィル・ハノーバーと申します」
「優秀だそうだな?」
「はい」
「其方はのちのち文官を目指しているのか?」
「いえ、兄の役に立つことが私の生きがいです」
「立ち入った話をする。皆の物さがれ。フィルよ、其方は年齢は?」
「16才になりました」
「その髪の色や瞳の色は生まれつきか?」
「そうです」
「ハノーバー家と血のつながりはあるのか?」
「??……ありません」
「……そうか。立ち入ったことをすまんな」
「恐れながら!王たるもの、そのように臣下に軽々しく頭を下げるようなことはいけません」
「これ、フィル!」
「まぁよい」
「それでは、御前失礼します」
その日、父上から母上に報告があった。
「―――ような会話をしました」
「はぁ、やっぱりね。血のつながりだのなんだの言ってきたのね。ホント今更なのよね。だいたい、自分の責任でしょ?そこらの女を勝手に妊娠させてほったらかしにしたんでしょ?ダメダメでしょ」
「母上、不敬です」
「あら、事実よ」
事実でも不敬と言う事実もある。
「今、フィルはどうしてるの?」
「部屋にいる」
俺はフィルの部屋に行った。
「フィル!お前、今日俺の弟として陛下に会ったんだってな」
「シェイク様は嫌ですか?」
「微妙だなぁ。お前みたいな優秀な弟がいたら俺は立場ないもん(笑)」
「今の関係がちょうどいいんですね?」
「That’s right!」
「俺もこの関係がいいです」
「だよなぁ。陛下に口出しされたくないよなぁ」
「不敬ですよ?」
「聞かれてないから、セーフだ」
フィルが面白そうに言う。
「兄上はまだ婚約をしないのですか?兄上の年齢ですと、結構行き遅れみたいな年齢ですけど?」
「フィルー、面白がってんじゃない!それにはわけがあってだなぁ。俺はフィルを拾う前までやたらと野良猫とか拾ってたんだよ」
「俺を拾ったのもその一環?」
「多分な。俺はどうやら、拾ってほしいと強く思っているものに引き付けられるみたいで、めっちゃ拾ってたんだ。結果、この屋敷には猫とかリスとか動物だらけ。この屋敷の二つ名が‘どうぶつの森’だ」
「あー、木も生えてますよね」
「リスのためだ。そんなだから、オトシゴロの令嬢は俺を敬遠するわけだな。釣書すらないぞ」
「俺の後は拾ってないですよね」
「何故だかな」
なんでだろう?